ジムが休みだった
お盆である。
アメリカにクリスマスがあり、中国に旧正月があるのなら、日本にはお盆があるのである。
その時期はお盆なのでと、そのように断っておけば国内の仕事なら大半を足止めすることができるだろう。いわゆる、休暇に関する国民的なコンセンサス。それが、お盆。
ところが、金融機関は休まない。何の因果か知らないが。証券取引所も絶賛営業中なのである。従って私も休めない。市場参加者などほとんどおらず、大体毎年この時期が一年で一番商いが少ないわけで、もう休みでいいんじゃないかと思うんだが、どうもなかなかそうはならない。
「いやー、うちは金融機関なので。暦通りです」
お盆だからと言って必ずしも休みではないことを嘆く金融マンの常套句。しかし意味がわからない。「金融機関」と「暦通り」が、なぜ順接の接続詞「なので」でつながるか。金融機関にはそうやすやすと休んではならないだけの社会的な使命があるとでも言いたいのか。半沢直樹か。だったら土日もやれっつうの。私は嫌だけど。
ということで、ガラガラの通勤電車に乗って、本日もドナドナと出社したわけである。
とはいえ、取引先は概ね夏休みにつき、特にやることはない。証券取引所は開いているので、という消極的な理由で出社しても、別に証券取引所から仕事がやってくるわけではない。
やむを得ず、何かの役に立つのかどうかも不明なリサーチ業務を軸に据え、ツイッターなどを活用したよりカジュアルな情報収集の割合を平時よりも若干高めるなどの工夫を凝らしつつ、どこかソワソワしながら時間が過ぎるのを待つ。
その時が来た。定時である。颯爽と会社を去る。外はまだ明るい。さあ行こう。でも、どこへ--
ジムに行くことにした。
そう。一昨日はついうっかり呑みすぎてしまったが、私はいま減量中なのである。マシンジムで汗を流し、ちょっと長めに水泳でもしたら、プールサイドで本でも読もう。それから、ゆっくりサウナにでも入ろうか。ジムは、我が家の最寄駅と隣駅の繁華街のちょうど間にある。手前の駅で降り、徒歩で向かう。
休みだった。
お盆だからである。お盆だから仕事が早く終わったのでジムに来たのに、ジムはお盆だから休みだった。もうね、アホかと。お前らがおれと同じタイミングで休んでどうするのかと。お前ら、社会的な使命ってのもをなんだと思ってるのかと。
倒錯した義憤に駆られながら、仕方がないので近所のジョギングコース(道路)を少し走る。
つい先日、日中に走った時は暑すぎてわずか1km走ったところで果てたが、今日は5kmイケた。うむ。悪くない。
気温はまだまだ高く、溢れる汗は否応もなく夏を感じさせるが、頬を擽る風には秋が混ざりはじめている。
そうだ。来週は夏休みだ(つづく)